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キャリアデザイナーのカウンセリング日記 より / 辞められない!

~2006.6.15~ 辞められない!

それは、昨年の3月、ある大手企業から内定が出た方のお話。

この方は、既に2年以上前から、
この大手企業に本命として狙いを定め、
ご自身でも実力を付け、企業研究をして、
昨年の年明けまもなく、応募のアクションを起こされました。

そして、これだけの前準備は、採用側の企業からも非常に評価され、
順調に選考が進み、無事内定を勝ち取られました。 

2年間以上の思いが実を結び、
私を含め、当社でこのいきさつを知っているスタッフも、
勿論ご本人自身も喜んでいらっしゃいました。

入社予定時期は、5月1日。

準備期間としては、一般的な期間でした。

会社に退職の旨を届け出て、了承を待っていたのですが・・・。

この会社、以前からリストラをしていた大手の外資系企業です。
リストラで人が足りず、組織の再編が7月になる為、
どうしても7月まで退職を待ってほしい、
というお話になってしまいました。

まあ、状況的にも、この方の実力的にも、
いきなり抜けると会社が痛手を受ける事は
よくわかりましたので、採用企業側も理解を示して下さり、
7月1日まで入社を伸ばす事で話がつきました。

ところが、6月の20日頃、ご本人から連絡があり、
さらに入社時期を1ヶ月ずらさないとならなくなったとの事。

ご事情をうかがうと、
6月20日頃には新組織のある程度の構想が出るという予定でしたが、
7月20日までは、上司のさらに上の方の決済がとれず、
退職が認められないらしい、というのです。

人事の方とのやりとりの書類やメールなど、
私にも色々見せてくださったのですが、
お話のとおり、
その上司の上の方、ご本人の退職を7月20日まで待つように、
と指示されていました。

ご本人もほとほと困られたのですが、
8月1日の入社をお約束する念書を作成され、
採用側の企業の人事、事業部長様あてで、
お送りするという状況となってしまいました。

その後、ご本人とも、頻繁に連絡をとりあって、
7月の15日頃までは、直属の上司の方も、サポートして下さり、
何とか、無事に20日を迎えられそうな状態でした。

ところが、20日直前に、
状況はさらに悪化の一途を辿りました。

上司の上の方が、社内の組織変更の中で、
取締役候補として名前があがったのです。

それ自体は良い事なのですが、なんと、
組織内から退職者などが出ると、
取締役として認定されないかもしれない、という事で、
その取締役候補の方は、
【断固、退職を認めない】
という方針のチェンジをされたのです。

これには、ご本人もびっくり。
直属の上司の方も、我々も頭を抱えました。

取締役候補から取締役になられるのには、数ヶ月の時間を有しますし、
二度までも入社時期を変更してきている事もあって、
これ以上の延長は無理だろうと、判断したからです。

ご本人は、上司だけでなく、
取締役候補の方に、直接を何度かお話をさせてほしいと願い出ましたが、
一向に聞き入れられず、
今まで協力的だった取締役候補の秘書の方や人事の方からも、
『あきらめた方がいいですよ。』
と避けられる始末。
(後からわかったのですが、
そのご本人からの問い合わせや依頼には対応しないように、
という指示が出ていました。)

ようやくセッティングできた話合いの場は、
直属の上司を交えたものでした。

お話し合いは、一方的なものだったようです。

直属の上司をご本人の前で罵倒し、
『お前が辞めるなどというから、
お前の直属の上司がこんな目にあうんだ。
お前が辞めたら、この上司がどうなるかわかっているのだろうな。』

と言われたそうです。

しかし、話合いが終わった後、直属の上司の方は、

『君の人生だ。
私の事は気にしないで、決めればいいよ。』

とおっしゃって下さったそうです。

この言葉を聞いて、ご本人の意思が決まりました。

自分の事をここまで思ってくれる上司、
おそらく、この人を置いて、自分の思いに走って退職したとしても、
その上司の今後の境遇を考えると、自分はハッピーではいられない。

退職できない・・・。


ご本人が2年半かけてきたキャリアビジョンは、
ここで途切れる事となりました。

しかし、義理堅い方で、
わざわざお詫びにお越し頂き、企業様にも、詫び状を作られて、
誠実に対応してくださりました。

最後のご決断はご本人も非常に苦しまれた事でしょう。

でも、人間的な、立派なご決断だったと思います。
直属の上司の方もご立派な方だと思いました。 

このお二人が、最終的にハッピーになれなければ、
世の中はおかしい、と思います。

そんな世の中でないと信じたい。

一度メールをいただきましたが、
その後、お二人はどうしていらっしゃるでしょうか。。。
お二人のご活躍をお祈りするばかりです。

一年前の事なのに、
随分昔の事のように思い出している自分がいたのでした。