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逆転劇のそのまた逆転

結構仲の悪い、とある中年の兄弟の話。

 

長男気質

弟が要領良すぎて、

いつも損な役回りが多い気がするが、

誠実な人柄と努力で、何とか人並にやっている。

昔から、弟の方がうまいことやってきたのが

気に入らないといえば気に入らない。(笑)

親も何かと「お兄ちゃんは我慢しなさい。」が口癖だった。

弟はいつも人に可愛がられて、自分は蚊帳の外にいるような気がした。

弟は教科書をチョチョッと読めば、学年でトップクラスの成績。

自分は一生懸命やって、やっと中の上。

出来がよい弟と比べられ、コンプレックスを持っていた。

弟が羨ましくて、妬ましくて、その上生意気で、嫌いだと思っていた。

まあ、だから努力家になったというか・・・。

そうやって自分で自分の人生を確立させてきた。

必死でキャリアを作ってきた。

 

一方のは、これまたしっかり末っ子気質

子供の頃から甘えん坊で、いつも兄の後を追っかけていた。

それがある意味当たり前になっていた。

でも、要領がいい。

勉強もできたし・・・。

見た目もキュートだし、やんちゃさも手伝って、かえって人に可愛がられた。

だが、社会に出るとその環境は変わる。

仕事、人付き合い、結構苦労した。

しかも、ある程度の年齢になると、兄は生真面目で負けず嫌いな性格から、

努力して成果を出すという事ができるようになった。

これは脅威だ。

自分と比較するようになった。

実際のところ、自分はもともと気は小さいし、

キャリアを考えると、恐ろしくなってくる。

たった一人で生きていくなんてできないという確信ができた。

兄は凄くて、世の中で一目置かれていて、

羨ましくて、憎らしくて、悔しかった。

見下されている気がして、大嫌いだった。

 

だから顔をみれば喧嘩ばかり。

許せないと何度も思ったが、家族だから、何とか耐えた。

そんな思いで過ごすこと~~十年。

今、二人は子供の頃とは逆で、

兄は比較的、要領よく日常生活を送るようになり、

弟は時間が作れなかったり、人との付き合い等がなかなか上手くこなせず、テンパる事が増えた。

 

悩んだ弟は、コーチングを受けて、そこでこんな事を提案される。

「あなたの良いところ、皆に聞いてみて!」

弟は、両親や自分の子供、友人、職場の人などに聞いてみる。

周囲から出てきた言葉は・・・。

 

・マイペース

・仕事を一生懸命やる

・やさしい

・器用

・運がいい

・いい子だったと思う

 

など。

そして、ついに兄に聞いてみる。

 

弟「ねえ、自分のいいところって何だと思う?」

兄「え? 要領いいとこじゃね?」

少し間を置き、

兄「んーーー。いや、ずる賢いとこがいいとこだよ。」

弟「どういうこと???」

兄「要領いいってことだ。」

弟「?」

 

弟は説明を求めた。

兄「だからね。子供の頃から、自分がいっつも親に怒られる。

不器用な生き方ばかりしてきたからね。

で、それをみてお前は『ああ、そういうことすると怒られるんだ~』と

悪い見本を参考にして、自分が地雷を踏まないようにしてきたんだよ。

な、要領いいっていうか、する賢いだろ!それがいいとこだ。」

弟「!!」

兄「なんで、今そんなに、テンパってばっかなの?」

弟「さあ・・・。」

 

兄は考えながら続ける。

兄「そうか、お前が子供の頃は、俺を見ていたから要領よくやれたのか。

昔は酷かったからなぁ。

でも今は、俺もそこそこ人並だから。

 

ん???? 待てよ、それって。

 

俺のおかげじゃないか?!」

 

衝撃な発言に弟はただ立ちつくす。

 

兄「そうか、俺のおかげ、俺の・・・お前のいいところは、いい兄を持ったことだ!

弟「・・・」

 

今までの人生で苦しんできた分を逆転勝利できた、という感じで

兄は得意げだった。

 

声も出ないほどの衝撃発言だったが、半分は納得した。

そうか、兄の苦労を見て、自分はいい子でいられたんだな。

兄はずっと自分を妬んできたはずだ。

でも、今の考えで多分・・・兄

 

「兄貴、今までの人生の思い込みが解けて、救われたな。良かったな!」

兄「はああぁ?!」

 

俺が救ってやったんだと言わんばかりの、弟の更なる逆転。

 

弟-心の叫び- (そうだよ、今、兄貴の人生を救ってやったのは俺なんだ!)

 

弟がいなくなると、兄は一人、苦笑いをした。

兄「人を救えるなんて、すごいじゃん。」

 

結局ね・・・

実は結構仲の良い、とある中年の兄弟の話。